知ってる?日本のロケット打ち上げ前に神社でお祓いする理由。
– 宇宙と神社を結ぶ、ちょっと素敵な物語
一枚の、不思議な写真から始まるんだ
ねえ、ちょっと想像してみてほしいんだ。轟音と一緒に、日本の真っ白なロケットが空へと昇っていく姿を。あれってさ、日本の科学技術のすべてが詰まった結晶みたいなものだよね。ほんの少しのズレも許されない計算、すごい技術の素材、そして何百人っていう技術者の人たちの熱い想いが、あの機体には込められてるんだ。
でもね、打ち上げがもうすぐっていうある日、発射場の近くの神社で撮られた、一枚の写真があるとしたらどう思う?そこにはね、最新のロケットの成功を願って、関係者の人たちが深く頭を下げてて、神主さんが厳かに祝詞(のりと)をあげてる姿が写ってるんだよ。
科学の最先端の場所で、どうして昔から続く「神頼み」なんてするんだろうって不思議に思うよね。ただの気休めとか、昔からの慣習なのかな?
ううん、実は違うんだ。そこには僕たちが思うよりずっと深くて、神話の時代から未来にまでつながる、日本人の壮大な宇宙観をめぐる物語が隠されてるんだ。この記事は、その謎を一緒に解き明かすための、時空を超えた旅への招待状なんだよ。
第1章【現在】:宇宙に一番近い場所でささげられる、優しい祈り
この不思議な光景、実は特別なことじゃないんだ。
1. チームみんなの祈り:JAXAの公式安全祈願祭
日本のロケット発射の拠点、種子島宇宙センター。そのすぐ近くに、地元の人たちから「宇宙神社」って呼ばれて親しまれてる宝満神社があるんだ。ここではロケットの打ち上げ前になると、プロジェクトの成功と、なにより関係者みんなの安全を願う「安全祈願祭」が行われるんだよ。これって、JAXA筑波宇宙センターの近くにある筑波山神社とか、他の場所でも見られる光景なんだ。
もちろん、技術者の人たちが科学の力を信じてない、なんてことじゃないんだ。むしろ逆。やれることは全部やった。考えられる準備は完璧にこなした。その上で、それでも残る人間の力を超えた領域――。その果てしない宇宙っていう存在への「畏敬の念」、そしてプロジェクトに関わる何百人もの心を一つにするための、すごく人間的で、大切な時間なんだと思う。
2. たった一人の想い:宇宙飛行士がそっと握りしめる「お守り」
それにね、その祈りはチームだけの儀式じゃないんだ。極限の環境にたった一人で向かう宇宙飛行士の人たちも、個人的な想いを宇宙に持っていくんだって。故郷の神社の御神札(おふだ)とか、家族からもらった小さなお守りを、フライトスーツのポケットにそっと忍ばせてね。
最高の科学的訓練を受けて、誰よりも合理的な考え方ができるはずの宇宙飛行士が、個人的な「祈り」や「縁」を大切にする。この話を聞くと、僕たちがどれだけ進化しても、心のどこかで大きな存在とのつながりを求める気持ちは変わらないんだなって、なんだかジーンとこない?
【ちょっと寄り道】他にもあるんだ、宇宙にまつわる神社
種子島の「宇宙神社」以外にも、日本には星や宇宙と深いつながりのある神社が結構あるんだよ。
- 千葉神社(千葉県):人の運命とか方角をつかさどる北極星の神様「妙見様」がいることで有名な神社だよ。
- 星田妙見宮(大阪府):七夕とか、星にまつわる素敵な言い伝えがたくさん残ってる、星の信仰がすごく厚い神社なんだ。
こういう神社のこと知ると、日本人が昔からずっと、空を見上げて星に祈りを捧げてきたんだなあって感じがするよね。
第2章【思想】:どうして僕たちは、自然に祈るんだろう?
すべてのものに神様がいるって考える、神道の優しい世界観。
じゃあ、どうして日本人はこんなに自然に、宇宙っていう大きな存在に祈りを捧げるんだろうね。その答えのヒントは、神道のすごく根源的な考え方にあるんだ。
神道にはね、「八百万の神(やおよろずのかみ)」っていう考え方があるんだ。これは、山とか川とか、一本の木や一つの岩にまで、世界中のあらゆるものに神様が宿ってるっていう、すごく優しい世界観なんだよ。この考え方からすると、僕たちが見上げてる空や星々、そしてその先にどこまでも広がる宇宙もまた、神聖な神様たちの領域ってことになるんだ。
この視点で見てみると、ロケット打ち上げの祈りの意味が、また少し違って見えてこない?それは「人間の技術で宇宙を征服してやる」っていう感じじゃなくて、「神聖な場所にお邪魔させていただきます。どうか、お許しください」っていう、謙虚な気持ちと敬意の表れなんだよ。
第3章【起源】:日本神話が語っていた「宇宙のはじまり」の物語
日本人の宇宙への畏敬の念。そのルーツをたどっていくと、びっくりするんだけど、この国で一番古い物語にまでたどり着くんだ。
日本最古の歴史書『古事記』って、聞いたことあるかな?その一番最初のページは、「天地初発之時(あめつちのはじめのとき)」っていう言葉で始まるんだ。まだ世界がごちゃまぜだった頃、天と地が分かれて、世界が始まった瞬間のことだね。この時、神様たちの世界「高天原(たかまのはら)」に、一番最初に現れた神様こそ、宇宙の中心にいるとされる「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」だったんだ。
誰かが世界を「創った」んじゃなくて、「自然に宇宙が生まれる」ことから神様たちが生まれてくる。日本の神話って、宇宙そのものへの尊敬の気持ちから始まってるんだ。僕たちが今、宇宙開発の成功を祈るのって、何千年も続く文化の記憶が、ごく自然にそうさせてるのかもしれないね。
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第4章【未来】:そして祈りは、本当に宇宙へ向かうんだ

この話、過去や現在だけで終わらないんだ。信じられないかもしれないけど、未来に向かって、今まさに、ものすごいスケールで動き出してるんだよ。
京都にある世界遺産の醍醐寺とかが中心になって、人工衛星の中にお寺の機能を持たせる「宇宙寺院(浄天院劫蘊寺)」っていうプロジェクトが進んでるんだ。その目的は、地球の周りを回りながら、つまり宇宙から、この星の平和とみんなの安全を祈るっていう、壮大なものなんだ。
神話の時代に、人々が地上から天上の世界を夢見たように。何千年もの時を越えて、日本人の祈りは、今まさに本当の拠点を宇宙に作ろうとしてる。これって、なんだか鳥肌が立つくらい素敵な話だと思わない?
終章:僕たちが見上げる空に続く、果てしない物語
JAXAの安全祈願から、宇宙飛行士のお守り、神道の優しい思想、古事記の壮大な神話、そして未来の宇宙寺院へ。
最先端の科学と、古代からの祈りが共存してること。それって全然矛盾してなくて、やれるだけのことは全部やるっていう人間の強さと、それでも人知を超えた大きな存在への尊敬の気持ちを忘れない、すごく日本的で美しい心の発露なんだと思うんだ。
今度、君と何気なく夜空を見上げる時、この話を思い出してくれたら嬉しいな。この星空の向こうにも、過去から未来へと続く、果てしない祈りの物語が、静かに流れているのかもしれないね。
「宇宙と祈り」について、もう少しだけ話さない?
Q. 海外でも、こういう儀式ってあるのかな?
A. うん、文化は違うけど、似たような習慣はあるみたいだよ。例えば、ロシアのソユーズ宇宙船は、打ち上げ前にロシア正教の神父様から祝福を受けるのが伝統になってるんだって。NASAでも、宇宙飛行士の人が個人的に祈りを捧げることはよくあるみたい。やっぱり、人間の力を超えた場所に挑戦する時って、世界中の誰もが、心の支えが欲しくなるんだろうね。
Q. どうして神道なんだろう?仏教とはどう違うの?
A. 安全祈願の場所に神社が選ばれることが多いのは、神道がその土地を守ってくれる「氏神様」への信仰とか、自然そのものへの尊敬をすごく大切にする宗教だからなんだ。もちろん、この記事で紹介した「宇宙寺院」みたいに、仏教も宇宙と深く関わろうとしているよ。それぞれのアプローチで、大きな宇宙っていう存在に向き合っているところが、また面白いよね。