神話史上最大の、兄弟ゲンカ
この前のイザナギとイザナミの話、ラストを覚えてるかな?
黄泉の国の穢れを払ったイザナギの禊(みそぎ)から、三人のめちゃくちゃすごい神様が生まれたよね。
- 長女:天照大御神(あまてらすおおみかみ) – 太陽を司る、高天原(天界)の女王。真面目な優等生。
- 次男:月読命(つくよみのみこと) – 夜を司る神様。クールで、ちょっと影がある感じ。
- 三男:須佐之男命(すさのおのみこと) – 海を司る嵐の神。やんちゃで、気分屋の末っ子。
父であるイザナギは、この「三貴子(みはしら)」にそれぞれの世界の統治を命じたんだ。
でもね、この三男坊のスサノオが、とんでもないトラブルメーカーだったんだよ…。
1. 「ママに会いたい!」泣き叫ぶ問題児スサノオ
アマテラスとツクヨミがちゃんと自分の仕事をこなす中、スサノオだけは、任された海原を治めようとしない。
それどころか、ひげが胸まで伸びるほど大人になっても、「うわーん!お母さんのいる国(黄泉の国)に行きたいよー!」って、毎日毎日、ただただ泣き叫んでばかりいたんだ。
その泣き声はあまりに激しくて、嵐を呼び、山を枯らし、地上の人々を苦しめた。見かねた父イザナギは、ついにブチギレる。
「お前みたいなヤツは、もうこの国に住むな!出ていけ!」
こうして勘当されちゃったスサノオだけど、「うん、わかった。じゃあ、お姉ちゃんに最後の挨拶だけしてから行くよ」って、姉のアマテラスが治める高天原へと向かうんだ。でも、これが新たな大騒動の始まりだったんだよ。
2. 「弟が攻めてきた!?」武装する最強の姉
弟の襲来を疑い、男装して武装するアマテラス。
スサノオが高天原に向かうと、その足音だけで山や川が鳴り響き、大地が揺れた。そのただならぬ気配に、アマテラスはすぐに気づくんだ。
「あの子が穏やかな気持ちで来るはずがない。きっと、私のこの国を奪いに来たんだ!」
そう思ったアマテラスは、なんと、女性の姿を解き、髪を男性のように結い上げ、鎧をまとい、弓矢と剣で完全武装!まるで勇ましい男の神様みたいな姿で、弟を待ち構えたんだ。太陽の女神、やるときはやるよね。
弟の潔白を疑う姉と、ただ挨拶に来ただけの弟。二人は、お互いの潔白を証明するための神聖な儀式「うけい」で、決着をつけることになるんだ。
3. 勝利に酔って大暴走!スサノオの非道な行い
「うけい」の結果、スサノオの潔白は証明された(と、スサノオ自身が思い込んだ)。
「やったー!俺の勝ちだ!」と勝利に酔ったスサノオは、ここからが高天原史上、最悪のやんちゃを始めるんだ。
- 姉のアマテラスが大切に育てていた神聖な田んぼのあぜ道を壊し、メチャクチャにする。
- 収穫したお米を食べる神聖な御殿に、こっそりウンチをする。
- 神聖な馬の皮を逆さから剥いで、神聖な機織り小屋の屋根に穴をあけ、投げ込む。
最後の嫌がらせは、あまりにひどかった。驚いた機織り女の一人が、機織りの道具(梭)で体を突いて死んでしまったんだ…。
最初は「弟も、きっと何か考えがあるのよ…」なんて、弟をかばっていたアマテラスだったけど、さすがにこの事件には、深く、深く傷ついてしまったんだ。
4. 「もう、知らない…」太陽、引きこもる
アマテラスが隠れたことで、世界は光を失った。
弟の非道な行いと、大切な部下の死。それに心を痛めたアマテラスは、とうとう、ある行動に出てしまう。
天の岩戸(あまのいわと)と呼ばれる洞窟に、たった一人で閉じこもってしまったんだ。
さあ、大変だ。太陽の女神が隠れてしまったんだから、高天原も、地上の世界も、すべてが真っ暗闇。悪さをする神々がそこらじゅうで騒ぎ出し、世界は災いに満ちてしまったんだ。
困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天の安河原(あまのやすかわら)に集まって、緊急対策会議を開く。そこで、知恵の神様・オモイカネが、あるとんでもない作戦を思いつくんだ。
それは…「岩戸の前で、めちゃくちゃ楽しい宴会を開こう!」っていう、陽動作戦だったんだよ。
5. 世界を取り戻せ!神々の陽動作戦
作戦はすぐに実行された。
まず、常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)っていうニワトリをたくさん集めて、一斉に鳴かせる。そして、最高の鏡「八咫鏡(やたのかがみ)」と、最高の首飾り「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」を用意する。
そして、この作戦の主役、芸能の女神アメノウズメノミコトが、桶をひっくり返した即席ステージの上で、神がかり的なストリップダンスを踊り始めたんだ!
その踊りがあまりに面白くて、セクシーだったから、集まった八百万の神々は、高天原が揺れるほどの大爆笑!
岩戸の中にいたアマテラスは、不思議でたまらない。
「私がここにいて、世界は闇に包まれているはずなのに…なぜ、みんなそんなに楽しそうなの?」
たまらず、岩戸を少しだけ開けて、外の様子をうかがう。すると、アメノウズメがこう言うんだ。
「あなた様より、もっと素晴らしい神様が現れたので、みんなで喜んでいるのです!」
そう言って、アマテラスの前に、そっと鏡を差し出した。
鏡に映った自分自身の輝かしい姿を、その「新しい神様」だと思い込んだアマテラスが、もっとよく見ようと身を乗り出した、その瞬間!
岩戸のそばに隠れていた力持ちの神様・タヂカラオが、その手をがっしりと掴んで、岩戸の外へと引きずり出したんだ!
こうして、太陽の女神は再び世界に現れ、世界は光を取り戻した。そして、大騒動の原因を作ったスサノオは、髪と手足の爪を抜かれ、たくさんの贖罪の品を科せられた上で、高天原から追放されることになったんだ。
どうだったかな?
神様たちの世界も、兄弟ゲンカが世界の危機にまで発展しちゃうなんて、なんだか人間みたいで面白いよね。
さて、天界を追放されたスサノオだけど、このままじゃ終わらない。地上に降りた彼は、ここからとんでもない怪物と戦う、最高のヒーローへと変身していくんだ。その話は、また次のお楽しみだね!