日常に戻るための「切り替えスイッチ」
お通夜や葬儀に参列した後、会葬礼状と一緒に渡される小さな塩の袋。なんとなく玄関先で体に振りかけているけれど、「このやり方で合っているのかな」「足元にかけるんだったっけ?」と、作法に自信がない方も多いのではないでしょうか。
この「お清め塩」は、単なる迷信ではなく、非日常(悲しみの場)から日常へと気持ちを切り替えるための大切な儀式です。
この記事では、お清め塩の本来の意味と、正しい振り方の手順について整理します。作法を知ることで、なんとなく行っていた動作が、心を整える確かな習慣へと変わります。
なぜ塩で体を清めるのか
神道において「死」は、邪悪なものではなく「穢れ(けがれ)」として捉えられます。穢れとは「気枯れ」、つまり生命エネルギーが枯渇した状態を指します。
葬儀という悲しみの場に行くと、どうしても気持ちが沈み、エネルギーが消耗します。その「枯れた気」を家に持ち込まず、塩の生命力で祓い清めてから日常に戻る。それがお清め塩の役割です。
ただし、仏教の中でも「浄土真宗」など一部の宗派では、「死は穢れではない(仏様のもとへ還る尊いこと)」と考えるため、お清め塩を使わないのがマナーとされています。参列した葬儀の宗派に合わせるか、自分の家の考え方に従って判断してください。
お清めを行うための視点
▼ここだけは覚えておいて
- 必ず玄関を「またぐ前(外)」で行う
- 順番は「胸 → 背中 → 足元」
最も重要なのは、家の中に穢れを持ち込まないことです。玄関のドアを開ける前、あるいは敷地に入る前に行います。マンションなどの場合は、玄関ドアの外で行えば問題ありません。

正しい振り方の手順
自分で行う場合と、家族にかけてもらう場合がありますが、基本の流れは同じです。
1. ひとつまみ取る
塩の袋を開け、指先で少量の塩をつまみます。残った塩は後で処分するか、足元に撒き切ります。
2. 「胸・背中・足元」の順に振る
心臓に近い「胸」、背負ったものを払う「背中(肩越し)」、大地と接する「足元」の順に、塩をパッパッと振りかけます。最後に手で衣服を軽く払い、床に落ちた塩を踏んでから家に入ります。
3. 手を洗って完了
家に入ったらすぐに手洗いをし、うがいをすれば完璧です。これで外の空気はリセットされ、安心して家族との時間に戻ることができます。
外からの気を断ち切ったら、家の中、特に心身を休める寝室の環境が整っているかも確認しておきましょう。

葬儀だけじゃない「日常のセルフお祓い」
お清め塩は、葬儀の時だけでなく、日常の中で「なんとなく調子が悪い」「嫌な場所に行ってしまった」と感じた時にも有効です。常備しておけば、いつでも気持ちのリセットができます。
🙆♀️ 🙆♀️ 向いていると感じる人
- 人混みに行くと疲れやすい
- 仕事のストレスを引きずりたくない
- 見えない汚れも落としたい
🙅♀️ 🙅♀️ 向かないと感じる人
- 塩で服が汚れるのが嫌だ
- 科学的根拠がないことはしない
- メンタルは常に安定している
まとめ
お清め塩は、誰かに強制されるものではなく、自分自身の心を納得させるためのツールです。
「これで悪いものは落ちた、家の中は安全だ」と脳に認識させることで、張り詰めていた糸が解け、いつもの安らぎを取り戻すことができます。作法を守ることも大切ですが、何より「ここで区切る」という意識を持って行ってみてください。