「神棚をリビングに置いているけれど、来客時にジロジロ見られるのはちょっと……」
「ワンルームで、寝ている姿が神様から丸見えなのが気まずい」
「家族に不幸があった時、神棚を隠すって聞いたけど本当?」
日本人にとって心の拠り所である神棚。しかし、現代の住宅事情やライフスタイルの中で、「神棚を隠したい」「見えないようにしたい」と悩むシーンは意外と多いものです。
でも、ちょっと待ってください。神様を勝手に布で覆ったり、扉を閉め切ったりしても良いのでしょうか? 「バチが当たるんじゃないか」と不安になりますよね。
実は、神棚を「隠す」という行為には、「絶対に隠さなければならない時」と、「工夫して隠しても良い時(むしろ隠すべき時)」、そして「やってはいけないNGな隠し方」が存在します。
この記事では、繊細な「神棚を隠す」問題について、伝統的な作法(忌中)と、現代的なインテリアの悩み解決の両面から徹底解説します。
これを読めば、神様に失礼なく、あなたの生活空間も快適に保つ「正解」が見つかるはずです。
原則:神棚を「隠す」のはアリ?ナシ?
まず大前提として、神棚は神様の「お家」であり、私たちを見守ってくださる場所です。基本的には、常に清らかで、明るく、見通しの良い状態にしておくのがベストです。
しかし、日本の神道は「穢れ(けがれ)」を嫌うと同時に、「礼節」や「奥ゆかしさ」を重んじる宗教でもあります。そのため、状況によっては「隠すこと」こそが礼儀となる場合があるのです。
「隠す」のではなく「守る・区切る」と考える
「隠す」と言うと、何かやましいことがあるように聞こえるかもしれません。しかし、神棚における目隠しは、神様を埃や直射日光、あるいは生活の雑多な視線から「守る」ための結界(けっかい)を作る行為と考えましょう。
神社のご神体も、本殿の奥深くに安置され、普段は御簾(みす)や扉で隠されていますよね。あれと同じで、適切な方法であれば、神棚を目隠しすることは決して失礼にはあたりません。
ただし、これには明確なルールがあります。まずは、最も重要かつ厳格なルールがある「忌中(きちゅう)」のケースから解説します。
【重要作法】家族に不幸があった時の「神棚封じ」
神棚を隠す最も代表的なシーンは、家族が亡くなった時です。これを「神棚封じ」と言います。これはインテリアの問題ではなく、神道の最重要マナーですので、必ず覚えておきましょう。
なぜ隠すの?「死=穢れ」の考え方
神道において、「死」は最大の「穢れ(けがれ)」とされています。ここで言う穢れとは、汚いという意味ではなく、「気枯れ(きがれ)」、つまり生命力が衰え、気が枯れてしまった悲しみの状態を指します。
神様は清浄な気を好まれるため、死の穢れが神棚に入り込まないように、白い半紙で神棚の正面を覆って封印する必要があるのです。
神棚封じの正しい手順
もしもの時に慌てないよう、手順を確認しておきましょう。
- 誰がやる?: 故人の家族(喪中の人)は穢れの状態にあるため、神棚に触れてはいけません。できれば、親戚や葬儀社の方など、第三者(穢れていない人)にお願いして行ってもらいます。
- いつやる?: 亡くなってから、帰宅してすぐ、または葬儀の準備が始まる前に行います。
- やり方:
- 神棚にお供えしてある榊、お米、塩、水、お酒などをすべて下げます。
- 神棚の扉を閉めます。
- 白い半紙(テープや画鋲を使ってOK)で、神棚の正面を覆い隠します。隙間がないように貼りましょう。
いつまで隠すの?「忌中」と「喪中」の違い
ここも間違えやすいポイントです。「喪中(もちゅう)」は1年間続くのが一般的ですが、神棚を隠すのは「忌中(きちゅう)」の期間だけです。
- 忌中(神棚を隠す期間): 仏教でいう四十九日、神道でいう五十日祭までの約50日間。
- 忌明け(神棚を再開): 50日が過ぎたら、忌明けとして半紙を取り外し、日常のお参りを再開します。
忌明けを迎えたら、家の中の気も一新しましょう。長く閉ざしていた神棚周りを清め、盛り塩などを新しくして、場をリセットすることをおすすめします。
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寝室・ワンルームの悩み「生活感を見せたくない」
次に、現代の住宅事情ならではの悩みです。
「ワンルームマンションで、寝る場所のすぐ近くに神棚がある」
「夫婦の寝室に神棚があり、夜の生活などを見られるのが気まずい」
これらは非常に切実な問題です。神様に見られていると思うと落ち着かない……その感覚自体は、とても正常で敬虔なものです。
寝室に神棚がある場合の対処法
結論から言うと、「寝る時だけ、または必要な時だけ、布や扉で目隠しをする」のはOKです。
神様側からしても、人間の着替えや寝姿が常に見えている状態は、あまり好ましいものではありません(神様にも遠慮があります)。以下の方法で、礼節を保ちつつプライバシーを守りましょう。
1. 白い布やロールスクリーンを活用する
神棚の手前に、清潔な白い布や、シンプルなロールスクリーンを設置し、夜間だけ下ろす方法です。
ポイントは「清潔さ」です。使い古しの布ではなく、神棚専用の新しい布を用意しましょう。和紙のような透け感のある素材なら、圧迫感もなく上品です。
2. 「御簾(みす)」を下げる
神社でよく見る、細い竹などで編まれたすだれ状の「御簾」。これを神棚の扉の前に下げておくと、常時下げっぱなしでも失礼になりません。
中は見えにくくなりますが、神様の気配は感じられる、最も伝統的でスマートな方法です。
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寝る「向き」にも注意を!
寝室に神棚がある場合、隠すこと以上に気をつけたいのが「足の向き」です。
神棚に足を向けて寝る「足向け」は、最大の不敬とされます。部屋のレイアウト上、どうしても足を向けてしまう場合は、間にパーテーションを置くか、目隠しの布をしっかり活用してください。
また、あなた自身の運気を上げるための「寝る向き(枕の向き)」も重要です。神棚との位置関係と合わせて、一度チェックしてみることをおすすめします。
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快適な睡眠環境を整えることは、邪気を払う基本でもあります。神様に失礼のない環境を作ったら、寝具も見直して運気のベースアップを図りましょう。
インテリアに馴染まないから隠したい?「箱宮」のススメ
「リビングがおしゃれな洋風だから、THE・神棚というデザインが浮いてしまう……」
「埃がかぶるのが嫌だから、覆ってしまいたい」
このように、インテリアとの調和や汚れ防止の観点から神棚を隠したい(収納したい)と考える方も増えています。そんな方に最適なのが、「箱宮(はこみや)」というタイプの神棚です。
箱宮(はこみや)とは?
箱宮は、その名の通り箱型のケースの中に神殿が入っているタイプの神棚です。
前面にガラスやアクリルの引き戸がついているものが多く、埃が入るのを完全に防げます。また、側面も囲われているため、洋風のリビングに置いても違和感がなく、家具の一部のようにおしゃれに設置できます。
これなら、「隠す」というよりは「ショーケースに入れて大切に祀る」という感覚に近く、神様にとっても居心地の良い空間になります。
壁掛けタイプも多く、棚の上を掃除する手間も省けるため、忙しい現代人には特におすすめです。
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DIYで隠す場合の注意点
最近では、カラーボックスやウォールシェルフを使って神棚をDIYする方もいますが、「隠す」ための扉やカバーを自作する場合は注意が必要です。
- 通気性: 完全に密閉してしまうと、気が淀み、カビの原因にもなります。格子状にするなど、空気の通り道を作りましょう。
- 素材: プラスチックや安っぽい素材で覆うのは避けましょう。できれば無垢の木材(ヒノキなど)や、天然素材の布を使用してください。
- 高さ: 隠すことに必死になって、目線より低い位置に設置するのはNGです。必ず目線より高い位置をキープしましょう。
神棚の「上」を隠す?「雲」の意味と重要性
「神棚を隠す」というテーマに関連して、もう一つ忘れてはならないのが、神棚の「上」に対する配慮です。
マンションや2階建ての1階に神棚を設置する場合、神棚の上を人が歩くことになります。これは「神様の頭を踏みつける」ことになり、非常に失礼です。
そこで、神棚の真上の天井に「雲」「天」「空」という文字を貼り、「ここより上は天空です(誰もいません)」という見立て(結界)を行うのがマナーです。
雲の文字も「目隠し」の一種
これは、物理的に天井を隠すわけではありませんが、上階の穢れや生活音から神様を遮断(目隠し)する、精神的なバリアのようなものです。
半紙に筆ペンで自分で書いて貼っても構いませんが、最近ではインテリアを損なわない木製の切り文字タイプがおしゃれで人気です。天井に貼るだけで、神棚周りの空気がピリッと引き締まります。
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神棚を隠す時の「掃除」と「心構え」
最後に、神棚を隠したり、覆ったりする際に併せて行いたいケアについてお話しします。
隠している間こそ、掃除を念入りに
御簾や布、あるいは箱宮のガラス戸で神棚を覆っていると、どうしても中の様子を確認する頻度が下がります。「気づいたら榊が枯れ果てていた」「中が埃だらけだった」なんてことになったら本末転倒です。
隠しているからこそ、意識的に中をチェックし、こまめに掃除をする習慣をつけましょう。特に箱宮のガラス面や、目隠し用の布が汚れていると、それがそのまま「邪気」を溜め込むフィルターになってしまいます。
神棚専用の掃除道具を用意しておくと、「さあ、清めよう」というスイッチが入りやすくなります。
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「隠す」のではなく「大切にする」気持ちで
神棚を目隠しする時、一番大切なのはあなたの「心」です。
「邪魔だから隠す」「見られると恥ずかしいから隠す」というネガティブな気持ちで行うのと、「神様に落ち着いていただきたいから区切る」「大切に守りたいから覆う」という敬意を持って行うのでは、結果として生まれる空間のエネルギーが全く違います。
たとえワンルームの狭い部屋であっても、あなたが神様を大切に想い、清潔な布一枚でも丁寧に掛けて差し上げれば、そこは立派な聖域となります。
まとめ:適切な「目隠し」で、神様と心地よく暮らそう
今回は、神棚を「隠す」ことの是非と、具体的な方法について解説しました。
【今回のまとめ】
・基本的に神棚は隠さないが、理由があればOK。
・忌中(家族の死):必ず「神棚封じ(白紙で覆う)」を行う。期間は50日。
・寝室・ワンルーム:就寝時や着替え時は、布や御簾で隠しても良い(推奨)。
・インテリア・汚れ防止:「箱宮」や「御簾」を活用すれば、おしゃれかつ清潔に守れる。
・神棚の上:「雲」の字を貼り、天井(上階)からの影響を遮断する。
神棚は、形式ばったルールも大切ですが、何より「一緒に暮らす」という感覚が重要です。あなたのライフスタイルに合わせて、無理なく、かつ敬意を持てる距離感を見つけてみてください。
適切な「隠し方(守り方)」を実践すれば、神様もきっと安心して、あなたを見守ってくれるはずです。まずは、気になっている神棚周りの埃を払うところから始めてみませんか?